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願うこと(夏目友人帳)

2011年07月09日 12:48

 瞬き、ひとつ。

 人の一生をその妖はそう例えた。

 その瞬き一つにどれ程の想いと記憶が入っているのか、彼は知っているのだろうか?

 春、夏、秋、冬。

 何回同じ季節を過ごしたのだろう。僕は年をとっていく。

 彼は相も変わらず同じ姿だ。

 初めて会った時から少しずつ、少しずつ。僕が彼を置いていく日が近づいてくる。

 それでも彼は言うんだ。

「お前が死ぬその日まで傍らにいよう」


 笑うんだ。そうやっていつものと同じように。

 だから僕は願うことにしたんだ。

 僕がいなくなっても、彼はいつものように耳を風にそよがせて昼寝しているような、そんな明日を。

一人と一匹(夏目友人帳)

2011年07月09日 12:46

「夏目」

 名を呼ばれ、肩に慣れた重み。

「次はどこなんだ?」

 少しだけ視線を向けると、白い猫のような妖。

「さぁ? よく分からない。ただ雪がよく降るところらしいよ」

「雪か。なら酒が美味いところだな」

「にゃんこ先生はいつもそれだ」

「むっ、何を言うか。酒は良いものだぞ」

 そう言って俺が笑うと、妖は眉をひそめた。

「俺は未成年だから飲めないよ」

「なら成人とやらまで待っといてやるから、さっさとなれ」

「無茶言うな」

 いつものように妖と軽口を叩きながら、新しい家に向かって歩き出した。

朝、残り香

2011年07月09日 12:45

「――じゃ、行ってくるな。お前も早く起きろよ」

 意外と長くて、少しごつごつした大きな手で頭をぐしゃりと撫でられる。それが彼の起こし方。

 と言っても、それじゃ自分は起きませんが。

「……………ん。」

 半分夢の中のまま彼に送り出し、再び夢の中。

 完全に目が覚めた時にはもう彼の姿はない。

 すでにカーテンを開けられてた窓からは目には痛い光が差し込んでいて。

 それから逃れるために毛布を頭から被れば、彼のタバコと香水の匂い。

 ……あー、またここで吸ったな。匂いがつくからやめろって言っているのに。

 でもこの匂いは嫌いじゃない。

 彼が傍にいるような気がして、少し安心する。

 思いっきりこの匂いを吸うと、また目蓋が重くなってくる。

 結局、自分が本格的に動き出すのは体が空腹を本気で訴えてくる頃だ。

2011年07月09日 12:40

 向かってくる風とか追い立てる風とか。

 自転車の後ろに立って感じる風はとても気持ちがいい。

 それを前でペダルをこぐ君に伝えると

「じゃ、もっと風が気持ちの良い所にいこっか」



 なだらかで長い坂。

 2人とも自転車を降りて、交互に自転車を押して。

 辿り着いた坂の頂上は。



 声を上げたくなる程景色が良かった。

「行くよ~」

 声をかけられて、振り向けば君はサドルに乗って準備万端。

 私も後ろに立って君の肩に手を置いた。



 ぐっとかかる慣性。

 でもその後はぐんぐんとスピードを上げて、どんどん風がやってくる。

 気持ち良くて。ちょうど追い風とか吹いて。

 もしかしたら翼で空を飛ぶってこんなカンジなのかもしれない。

 そんなことを思いながら、私は歓声をあげた。

2011年07月09日 12:40

 眠れなくて、ただ横になって目を閉じていた。

 昼間と違い、音が少ない所為か自分の心臓の音がやけに響く。

 時計の秒針は何故か自分を焦らせる。

 眠らなくては 寝なくては……。

 そう思って目を強く閉じても眠気は一向にやってこない。



 不意に忍び足。

 誰かを気にするようなそんな感じ。

 部屋のドアもいつもより慎重に開けられる。

 ――やっと帰ってきたか。

 その音に少しだけ安堵する。

 彼は俺が寝ているのを確認すると備え付けのクーラーの温度を一気に下げる。

 そして自分のベッドから枕を持ってきて、俺のベッドにもぐりこんできた。

「うー、寒いね」

 独り言を言いながら、俺に引っ付いてくる。

「……寒いならエアコンを切ればいいだろう」

 思わず俺は返答する。

 暗闇で見えないが、彼はきっと笑っている。

「起こした? それとも起きてた?

 起きてたんだよね~。愛してるよ、マイハニー」

 断定的な言い方は合っているだけに腹が立つ。

「ふんっ、誰がてめぇのために貴重な睡眠時間を削るか」

「いやん、いけずー」

「言ってろ、バカ」

「ふふっ……ただいま不眠症候群」

「お帰り、環境破壊魔」



     もうじき 夜が明ける



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