スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

みそかデート

2011年07月09日 12:37

 昼食後の気だるげな時間。

 危険だからという理由で常に鍵のかかっている屋上。

 そこが私と先輩の憩いの場所だ。

 先輩は私の右隣でタバコをふかしながら、空を見上げている。

「せんぱーい。制服にヤニ臭さがつきますよ」

「あっ?」

 先輩はタバコを銜えたまま、こちらを向く。

 これが結構間抜け顔とだというのは先輩には内緒で。

 私が無言で右手を差し出すと、先輩は仕方なさそうにブレザーとネクタイを投げてくる。

「やっぱ、一枚脱ぐと寒いな」

 そんなことを言いながら、先輩は私ににじり寄ってくる。それにあわせて、私も左に移動。

「……おい」

「寄ってこないで下さい。私、ヤニ臭くなるのは嫌ですよー」

 先輩の抗議の声に私はさらに逃げる。

「……あー分かった、分かったから。もうこれ以上動かないから。

 こっち帰って来い。年頃の男の子としては、女の子に逃げられるのは結構ショックなんだよ」

「だったら、逃げられるようなことしなければいいじゃないですか」

 動きを止めた先輩を少し警戒しながら、私は元いた場所に戻る。

「そうやって憎まれ口ばかりを叩いていると、彼氏ができねーよ」

「……別に、今のところいないと困っているわけではないので……」

「の割には、尻窄まりしてるけど?」

 先輩はにやりと笑って、長くなった灰を携帯灰皿に落とす。

「先輩こそ、そーゆーの余計なお世話って言うんですよ」

「だから、その口をやめろって言ってるんだよ」

 先輩は私の方に体を寄せて、私の頬をつねった。

「いたっ。先輩、いきなり何するんですか!」

 即座に叩き落として、つねられた頬を手を擦る。

 そんな私の様子に先輩は少し笑って、

「――ところでさ、お前は大晦日の語彙の意味知ってんか?」

「い、きなり何ですか? 知りませんけど」

「”みそか”ってーのが、月の最終日のことで、年の最終日だから大晦日なんだって」

「はぁ。それが?」

 突然始まった先輩の微妙なうんちくに、私は困惑を隠さずに話の先を促す。

「その”みそか”って言葉が面白くてな。”みそか”には別の言い方で”つごもり”。月が隠れるって意味。

 ありえない事って意味で『晦日に月が出る』って慣用句があるぐらいだ。

 つまり、”みそか”には月が出ないとされていたんだ」

「……せんぱい、短めにお願いします」

 先輩は私の抗議を軽くいなして、

「まぁ、聞けって。

 昔の夜なんて、月が無ければ明かりがないのと同じ。つまり、人目に知られたくないこともできる。

 それで”密”と書いて、”みそか”と読むようになった」

「先輩って、博識だったんですね」

 長くて、ぶっちゃけ半分ぐらい聞き流したけど。

 先輩は苦笑して、

「んにゃ。コレは俺の個人的解釈。

 で、ここからが本題なんだけど」

 ……前振り、長っ。

「俺とみそかデート、しない?」


          愛の告白なのか、それとも単なるおサボりデートなのか。
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。