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測る重さ (涼宮ハルヒ)

2011年07月09日 12:51

「”世界”と”貴方”かどちらか選べと言われたら、僕は迷わず”世界”を選びます」
 気が付けば、俺たちだけになった部室で古泉は静かにそう言った。
「――何の話だ」
「そう遠くない話です。僕たちのことはいずれ彼女の知るところになるでしょう。
 その時どちらを選ばなくてはいけないでしょうから」
 長机の向こう側。
 何度も対戦したテーブルゲーム。
 何を考えているのかさっぱり読めない古泉。
 いつもと変わらないのはそれだけで。
 なんと返してよいか考えている俺をそのままに古泉は話を続ける。
「まぁもっとも。選ぶより前に僕の存在抹消の可能性が高いですが」
「はぁ? なんだよそれ」
 思わず眉をひそめて、声が低くなる。古泉は笑った。時々見せる困った笑顔。
「あなたが思っているより彼女は”貴方”を気に入っています。僕とあなたの関係に気づけば、面白くはないでしょう。女の嫉妬ほど怖いものはありません」
「…………可能性の問題だ。かならずしもそうなるとは言えないだろ」
「そうですね……可能性の問題です。忘れてください、単なる戯言です」
 やはり変わらないその笑顔が妙にムカつく。人を悩ましといて、戯言とはなんだ。
「一人の人間を消さないと存在できない世界なら。俺は、その世界にいる俺は俺じゃない」
 感情のまま言った言葉に古泉は驚いたのか、珍しく目を見張っていた。
 あぁ、やっと変わった。

 お前が消えるというなら俺も消えてやるよ。

 だからさ、そんな顔するなよ。いつもと違って感情が読みやすくてやりづらいんだよ。

 そんなこと言ったらこいつはどんな顔をするのだろうか。
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贈り物 (tales of the abyss)

2011年07月09日 12:50





         君に贈り物をしよう

         どんなものを贈ったら

         君は 喜んでくれるだろうか?

         きっと

         どれを贈っても 君は

         同じ事をいうのだろう

         それが簡単に想像できて 俺は 少し笑った


         そうだ

         君が思いつかない 贈り物をしよう

         きっと

         君は 怒るだろうけど

         それでも 受け取ってくれる




         俺が 見たもの 感じたもの  全ての記憶を 贈ろう




         皆と 約束したけれど 俺は それを守れそうにないから

         せめて 俺の言葉を 皆に伝えてくれないだろうか


         ごめんな

         ごめんなさい

         でも ありがとう



         俺は幸せ者です

貴方(code geass)

2011年07月09日 12:49



         空が あなたを連れて行ってしまいました

         人々が あなたの笑顔を奪っていきました

         世界が あなたの嘘だけを残していきました

         あなたが どんな顔をして 喜び 怒り 哀しみ 楽しんで いたのかを

         私は 忘れてしまいました




         それでも  それでも




         私は あなたという存在を覚えています

         風が あなたの優しさを覚えています

         雨が あなたの貴さを覚えています

         星と月が あなたの孤独を覚えています

         世界が あなたの嘘を残してくれました





         私たちは あなたという存在に愛されて

         この場所で 生きています





         どうか どうか




         また会える日まで あなたに限りない幸せが満ちていますように。

願うこと(夏目友人帳)

2011年07月09日 12:48

 瞬き、ひとつ。

 人の一生をその妖はそう例えた。

 その瞬き一つにどれ程の想いと記憶が入っているのか、彼は知っているのだろうか?

 春、夏、秋、冬。

 何回同じ季節を過ごしたのだろう。僕は年をとっていく。

 彼は相も変わらず同じ姿だ。

 初めて会った時から少しずつ、少しずつ。僕が彼を置いていく日が近づいてくる。

 それでも彼は言うんだ。

「お前が死ぬその日まで傍らにいよう」


 笑うんだ。そうやっていつものと同じように。

 だから僕は願うことにしたんだ。

 僕がいなくなっても、彼はいつものように耳を風にそよがせて昼寝しているような、そんな明日を。

一人と一匹(夏目友人帳)

2011年07月09日 12:46

「夏目」

 名を呼ばれ、肩に慣れた重み。

「次はどこなんだ?」

 少しだけ視線を向けると、白い猫のような妖。

「さぁ? よく分からない。ただ雪がよく降るところらしいよ」

「雪か。なら酒が美味いところだな」

「にゃんこ先生はいつもそれだ」

「むっ、何を言うか。酒は良いものだぞ」

 そう言って俺が笑うと、妖は眉をひそめた。

「俺は未成年だから飲めないよ」

「なら成人とやらまで待っといてやるから、さっさとなれ」

「無茶言うな」

 いつものように妖と軽口を叩きながら、新しい家に向かって歩き出した。

朝、残り香

2011年07月09日 12:45

「――じゃ、行ってくるな。お前も早く起きろよ」

 意外と長くて、少しごつごつした大きな手で頭をぐしゃりと撫でられる。それが彼の起こし方。

 と言っても、それじゃ自分は起きませんが。

「……………ん。」

 半分夢の中のまま彼に送り出し、再び夢の中。

 完全に目が覚めた時にはもう彼の姿はない。

 すでにカーテンを開けられてた窓からは目には痛い光が差し込んでいて。

 それから逃れるために毛布を頭から被れば、彼のタバコと香水の匂い。

 ……あー、またここで吸ったな。匂いがつくからやめろって言っているのに。

 でもこの匂いは嫌いじゃない。

 彼が傍にいるような気がして、少し安心する。

 思いっきりこの匂いを吸うと、また目蓋が重くなってくる。

 結局、自分が本格的に動き出すのは体が空腹を本気で訴えてくる頃だ。

2011年07月09日 12:40

 向かってくる風とか追い立てる風とか。

 自転車の後ろに立って感じる風はとても気持ちがいい。

 それを前でペダルをこぐ君に伝えると

「じゃ、もっと風が気持ちの良い所にいこっか」



 なだらかで長い坂。

 2人とも自転車を降りて、交互に自転車を押して。

 辿り着いた坂の頂上は。



 声を上げたくなる程景色が良かった。

「行くよ~」

 声をかけられて、振り向けば君はサドルに乗って準備万端。

 私も後ろに立って君の肩に手を置いた。



 ぐっとかかる慣性。

 でもその後はぐんぐんとスピードを上げて、どんどん風がやってくる。

 気持ち良くて。ちょうど追い風とか吹いて。

 もしかしたら翼で空を飛ぶってこんなカンジなのかもしれない。

 そんなことを思いながら、私は歓声をあげた。

2011年07月09日 12:40

 眠れなくて、ただ横になって目を閉じていた。

 昼間と違い、音が少ない所為か自分の心臓の音がやけに響く。

 時計の秒針は何故か自分を焦らせる。

 眠らなくては 寝なくては……。

 そう思って目を強く閉じても眠気は一向にやってこない。



 不意に忍び足。

 誰かを気にするようなそんな感じ。

 部屋のドアもいつもより慎重に開けられる。

 ――やっと帰ってきたか。

 その音に少しだけ安堵する。

 彼は俺が寝ているのを確認すると備え付けのクーラーの温度を一気に下げる。

 そして自分のベッドから枕を持ってきて、俺のベッドにもぐりこんできた。

「うー、寒いね」

 独り言を言いながら、俺に引っ付いてくる。

「……寒いならエアコンを切ればいいだろう」

 思わず俺は返答する。

 暗闇で見えないが、彼はきっと笑っている。

「起こした? それとも起きてた?

 起きてたんだよね~。愛してるよ、マイハニー」

 断定的な言い方は合っているだけに腹が立つ。

「ふんっ、誰がてめぇのために貴重な睡眠時間を削るか」

「いやん、いけずー」

「言ってろ、バカ」

「ふふっ……ただいま不眠症候群」

「お帰り、環境破壊魔」



     もうじき 夜が明ける

ユラユラ、星ときみと

2011年07月09日 12:38

 良く言えば、マイペース。悪く言えば、唯我独尊。

 そんな彼の言葉はいつも突然だ。



「プラネタリウムが見たい」

 朝、リビングで目が合って、一言。

 おはようもなしか。

「……あっそう。とりあえず、お前はその頭をどうにかしろ。

 さながら無重力状態、もしくはスーパーサイヤ人。

 それとその顔もどうにかして来い。見てくれだけがお前の取り柄だろ。

 まずは風呂に行け!」

 俺は味噌汁をかき混ぜていたお玉を突きつける。

 彼と腐れ縁の俺から言わせれば、話を聞いてやればつき合わされるのがオチだ。

 いちいち聞いたら、体がもたない。今だって、ぎりぎりなんだから。

「ねぇ、俺の話聞いてる?」

 朝の不機嫌を隠しもせず、彼はこちらに寄ってくる。

「聞いてるよ。プラネタリウムが見たいんだろ?

 言っとくけどな、この近くにプラネタリウムはないし、あっても山の中の自然のプラネタリウムだ。

 おもちゃのプラネタリウムもあったと思うが値段が高いのと、壁の角で曲がるのを見るのが夢がないから却下。

 他にプラネタリウムを見る方法があるのなら、自分でなんとかしろ、以上。

 さぁ、お前は風呂」

 とりあえず蹴ってリビングから彼を追い出す。

 しばらく廊下でぶつぶつと文句を言っていたようだが、風呂から出た後は何事も無かったかのように振舞っていたので俺もあきらめたのだと安心したのだが。


 ――と、思った俺がやっぱり甘かったのだと痛感したのは、夜、夕飯の材料を抱えてたまま玄関のドアを開けた瞬間だった。

「……っ! 何だよ、この匂い」

 鼻につく人工の花の匂い。

 嫌がらせか? ……嫌がらせだな。

「あっ、おかえり~」

 なにやらご機嫌な様子の彼が洗面所兼脱衣所から顔を出す。

「ちょうど今準備ができたんだ。荷物を置いて、こっち来て」

 嬉しそうに手招きするが、俺の経験から物を言わせてもらえば、あいつがあんな顔をしている時は大概いいことはない。

 言うならば、子ヤギの皮をかぶった悪魔。

 ……ん? 悪魔ってのはヤギの角を持っていなかったか?

 それじゃ、おんなじことか。

「ちょっと、はやくー!」

 彼のせかす声に俺はため息をつく。あぁ、俺の幸せが逃げていく。

 とりあえず食材を冷蔵庫に放り込んで、彼の場所へと行く。

 彼は風呂場へと続くドアの前に立ち、ニコニコと笑っている。

「やっと来た。遅いー!」

「食材を冷蔵庫に入れていたからな」

「あっそう。じゃ、ちょっとここで待ってて。俺がいいよーって言うまで入っちゃ駄目だからねー」

 なんて言いながら、彼は風呂場に入っていく。

「……なぁ、この花みたいな匂いとお前がやろうとしていることって関係あるだろ」

「ふふっ、どうだろうねー」

 どうだろうねーじゃねぇよ、バカ。

 確認のつもりで聞いたのだが、なんとも要領の得ない答え。

 仕方ないので、俺は洗面所の壁に寄りかかる。

 風呂場のドアは半透明で彼が腰を屈めて浴槽に何かをしているのが、影の形で分かる。

「いーよ。入ってきて。……あっ、入る前に洗面所と風呂場の電気切ってきてから来て」

「そんなことしたら、真っ暗で見えないだろう」

「いんだよ。ってか真っ暗じゃなきゃ困るんだ」

「なんだよ、それ」

 何をしたいのか皆目検討がつかないが、彼の言うとおりにする。

「……あっ」

 真っ暗になると思っていたが、風呂場がほのかに明るい。

 不思議に思って、風呂場のドアを開ける。

「……っ」

 むせ返るような花の匂い。

 そして目に入ったのは。

 水を張った浴槽の中をユラユラと揺れるいくつもののキャンドル。

「……何コレ?」

 ぶっちゃけ、それしか出てこなかった。

「朝、プラネタリウムが見たいって言ったじゃん」

「…………あぁ、言ってたな」

「それで、最初LEDとかを買って作ろうかなーって思ったんだけど、

 思いのほか、LEDが高かったから小さなキャンドルを買って部屋でしようと思ったんだけど、

 風呂場でやった方が面白そうだなって思って」

 色々思ったんだな。

 ご満悦な顔で浴槽の縁に座る彼。

 まぁ、確かに水場だから、火事になることはないだろうが。

 揺れる炎は幻想的できれいなのは否定しないが。

「なんだって、匂いつきのキャンドルなんだよ?」

 他にも色々あっただろうに。

「ん? あぁ、ほら花の形してるのあるでしょ?」

 彼が1つのキャンドルを指差す。

「花の形が星に似てたから、買ったの」

 あぁ、そうですか。

「とりあえず、窓開けようぜ。

 俺、この匂いちょっと苦手」

「いっぱいあるから、匂いがきつくなっているんだろうね」

 彼はのん気にそう返すが、俺は換気扇と窓を全開にする。

 あぁ、少し回復した感じ。

「ねぇ、突っ立ってないで、座ろうよ」

 手招きされて、俺も縁に座る。

 彼は浴槽に手を入れて、波を作る。

 それにあわせて、キャンドルもユラユラと動く。

 しばらく俺も彼も無言で見ていた。

 なんとなく、心地いい気分になる。

「――まるで、さ」

 彼がキャンドルを見たまま、話し始めた。

「ん?」

「まるで、神様が見る星空みたいだね」

「なんだよ、それ?」

 突飛の無い言葉に思わず彼の方を向く。

「神様は人間と違って空のはるか上にいるのだから、星空もこんな風に見下ろしているんだろうなって思って」

「何? お前、神様信じる人?」

 かれこれ十年近く腐れ縁をしているが、初めて知った真実かもしれない。ちょっと驚き。

「いやばりばりの無神論者だよ」

 って、違うのかよ。俺の驚きを返せ。

「でもさ、そんな風に考えた方が素敵じゃない?」

 ……女の子みたいに首を傾げられてもな。

「そうだな」

 彼の行動をあえて無視して、俺は頷いて視線をキャンドルに戻した。

「今度さー、長い休みにどっかプラネタリウムが見れるところに行こうよ」

「あー、考えとく」

 この期に及んで、まだあきらめていなかったのか。



 別に言う必要も無いと思うが、とりあえず言っとく。

 数日はあの花の匂いが風呂場から消えなかった……

みそかデート

2011年07月09日 12:37

 昼食後の気だるげな時間。

 危険だからという理由で常に鍵のかかっている屋上。

 そこが私と先輩の憩いの場所だ。

 先輩は私の右隣でタバコをふかしながら、空を見上げている。

「せんぱーい。制服にヤニ臭さがつきますよ」

「あっ?」

 先輩はタバコを銜えたまま、こちらを向く。

 これが結構間抜け顔とだというのは先輩には内緒で。

 私が無言で右手を差し出すと、先輩は仕方なさそうにブレザーとネクタイを投げてくる。

「やっぱ、一枚脱ぐと寒いな」

 そんなことを言いながら、先輩は私ににじり寄ってくる。それにあわせて、私も左に移動。

「……おい」

「寄ってこないで下さい。私、ヤニ臭くなるのは嫌ですよー」

 先輩の抗議の声に私はさらに逃げる。

「……あー分かった、分かったから。もうこれ以上動かないから。

 こっち帰って来い。年頃の男の子としては、女の子に逃げられるのは結構ショックなんだよ」

「だったら、逃げられるようなことしなければいいじゃないですか」

 動きを止めた先輩を少し警戒しながら、私は元いた場所に戻る。

「そうやって憎まれ口ばかりを叩いていると、彼氏ができねーよ」

「……別に、今のところいないと困っているわけではないので……」

「の割には、尻窄まりしてるけど?」

 先輩はにやりと笑って、長くなった灰を携帯灰皿に落とす。

「先輩こそ、そーゆーの余計なお世話って言うんですよ」

「だから、その口をやめろって言ってるんだよ」

 先輩は私の方に体を寄せて、私の頬をつねった。

「いたっ。先輩、いきなり何するんですか!」

 即座に叩き落として、つねられた頬を手を擦る。

 そんな私の様子に先輩は少し笑って、

「――ところでさ、お前は大晦日の語彙の意味知ってんか?」

「い、きなり何ですか? 知りませんけど」

「”みそか”ってーのが、月の最終日のことで、年の最終日だから大晦日なんだって」

「はぁ。それが?」

 突然始まった先輩の微妙なうんちくに、私は困惑を隠さずに話の先を促す。

「その”みそか”って言葉が面白くてな。”みそか”には別の言い方で”つごもり”。月が隠れるって意味。

 ありえない事って意味で『晦日に月が出る』って慣用句があるぐらいだ。

 つまり、”みそか”には月が出ないとされていたんだ」

「……せんぱい、短めにお願いします」

 先輩は私の抗議を軽くいなして、

「まぁ、聞けって。

 昔の夜なんて、月が無ければ明かりがないのと同じ。つまり、人目に知られたくないこともできる。

 それで”密”と書いて、”みそか”と読むようになった」

「先輩って、博識だったんですね」

 長くて、ぶっちゃけ半分ぐらい聞き流したけど。

 先輩は苦笑して、

「んにゃ。コレは俺の個人的解釈。

 で、ここからが本題なんだけど」

 ……前振り、長っ。

「俺とみそかデート、しない?」


          愛の告白なのか、それとも単なるおサボりデートなのか。



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